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労働 企業法務

内定承諾がない場合の対応について①

弁護士 小島梓

 現在、多くの法人が、採用活動において、まずは、法人が採用したい人に内定を出す→内定を承諾した人を採用→正式入社という流れをとっていると思います。
 しかし、内定を出す際に内定を承諾される場合は連絡をとお願いしていても、長期間返事がない人がいます。当事務所でも顧問先から、内定を出したが、承諾の返事がないので、追加で内定を出すために、内定を取り消してよいかなどのご相談を受けることがあります。

 法人にしてみると、一定人数の採用者を確保したいため、当然の要望ではあります。しかし、内定取り消しは簡単に行えることではないため、注意が必要です。
 そこで、本コラムでは、内定の法的性質から内定承諾がない場合、内定取り消しができるのか、どう対応すべきかということについて説明をしていきたいと思います。

 まずは、採用内定の法的性質についてです。

 一般的に法人の採用手続きは、従業員の募集→これに対する入社希望者による応募→企業の選考→内定→採用という流れで進んでいきます。
この流れについて、法的には、
■法人による募集=労働契約申し込みの誘因
■これに対する応募=労働者による契約の申込み
■法人からの採用内定通知=申し込みに対する承諾
■法人と内定者の間に「(始期付)解約権留保付労働契約」が成立
と考えられています。

 入社前の段階なので、労働契約の効力発生時期については考え方がわかれているのですが、いずれにせよ、法人から内定通知を出した段階で、解約権留保付の労働契約が成立していることに変りはありません。つまり、内定者から内定承諾や承諾通知書が提出されない場合でも条件付きの労働契約は成立していると考えられているということになります。

 したがって、内定承諾がない人につき、内定を取り消したいと考えた場合、労働契約の解約を適法に行いうるかどうかを考える必要があります。
 次回のコラムでは、解約権行使の適法性について説明していきたいと思います。