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許可していないマイカー通勤により起こした交通事故と通勤災害②

弁護士 小島梓

 前回のコラム(「許可していないマイカー通勤により起こした交通事故と通勤災害①」をご参照ください。)でご説明したように、「通勤災害」と認められるためには、就業に関して、住居と職場の移動等を合理的な経路及び方法にて行うこと(業務の性質を有するものを除く)が条件となります。
 では、就業規則でマイカー通勤が禁止されている状況で、会社の許可を得ることくマイカー通勤をした場合でも、「合理的な経路及び方法」と言いうるのでしょうか。

 「合理的な経路及び方法」については、以下のように考えられています。(東京労働局の「通勤損害について」に関するページもご覧になってみてください。)
・就業に関する移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法である。
・合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となる
・合理的な方法については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法を平常用いているかどうかにかかわらず、一般に合理的な方法となる。

 上記によれば、就業規則で申請しているか否かは合理的な経路及び方法に当たるか否かの判断基準にはなっていません。就業規則でマイカー通勤が禁止されているか否か等に関係なく、電車、バス等の公共交通機関の他、マイカーについても、労働者が通常用いる方法であれば、合理的な経路・方法として認められる場合はあるということになります。

 したがって、就業規則でマイカー通勤が禁止されており、隠れてマイカー通勤をしていた社員が交通事故を起こした場合でも通勤災害として認められる可能性はあるということになります。ですので、就業規則でマイカー通勤を禁止しているから、申請せずに勝手にマイカー通勤をしていたからというだけで、通勤災害に当たらないと即断するのは危険です。その他の事情もよく考慮の上、判断をしていただければと思います。迷う場合には、労働局への問い合わせ等も有用です。

 仮に通勤災害に該当するとしても、マイカー通勤が禁止されているにもかかわらず、マイカー通勤をしていたという事実は変りません。どのように対応すべきか、次回のコラムにてご紹介します。