columnコラム

労働 企業法務

入社前研修の賃金について②

弁護士 小島梓

 前回のコラムでお伝えしたように、会社と内定者との間で何らの取り決めがない場合でも、入社前研修が「労働」と言える場合には、法律によって会社には、賃金の支払い義務が発生することになります。
 そこで、今回は「労働者」に該当するか否か、どのように検討すればよいかということを簡単にご説明していきます。

 労働基準法9条において「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」とされています。
 本問題において判断基準として重要になるのは、「事業又は事務所に使用される者」と言えるか否かという点です。裁判において、該当性は様々な要素から判断されることになりますが、最重要ファクターと言えるのが、業務にかかる使用者からの指揮命令を受けていたか否かという点です。
 具体的には、任意参加であるか否か、研修時間の管理状況、入社後の業務との関連性などの要素から判断していくことになります。

 例えば、同期同士で親交を深めてほしいということで、会社が主催しして研修を行うが、中身としては、同期同士の食事会がメインであり、自由参加というようなことであれば、「労働」とはならない可能性が高いです。

 他方で、入社後にスムーズに業務を始めてもらうために、研修所等に内定者を集め、泊まり込みで、業務に関連する法規則等の勉強をさせ、夜は懇親会等になりますと、事実上参加が義務付けられてしまうでしょうし、特に日中の勉強については「労働」に該当する可能性が出てくると思います。

 このように、入社前研修に参加する内定者が「労働者」に該当するか否かは、その研修内容によって異なると考えられています。
 前回のコラムにおいて、お伝えしたように、研修内容を検討した結果、参加者である内定者は「労働者」となりうるとなった場合は、内定者に賃金等の対価を支払う必要がでてきます。次回は、この賃金等の金額をどのように決めるべきかについてご説明します。